仕事を作る

才能を活かして進んでいくと、運命の扉へと続く道が着実になっていきます。作家アーノルド・パテントがうまく表現しています。

「どうしても伝えなければならないことの向こうには、どうしてもそれを聞きたいという人がいる」

自分が果たすべきことはすでに運命づけられているとしたら、いったい何をすべきなのでしょう。

ただ、自然界の法則に黙って従うだけの遺伝子の運び屋でしかないのか。

巨大な機械の中の交換可能な歯車の一つでしかないのか。

もちろん、そんなことはありません。あなたがなすべきことは、神様もご存知ないのです。

なぜならば、あなたがまだその才能を発揮していないからです。

人には、その人だけが持っている貴重な才能があるはずです。

その才能を活かせば果たすべき役目もわかってきます。

これが生命活動の循環ー自分の才能を世の中に活かせば、世の中はそれに応えて、成功に必要なものを与えてくれます。

才能を開花させたことに報酬を与えるのが経済システムであり、この原則がくずれるといずれシステムは失敗することになります。

旧ソビエト連邦の共産体制の崩壊を考えるといいです。

共産主義は才能と報酬というサイクルを断ち切ってしまうものでした。

旧ソ連の共産主義社会システムでは、全労働者に一律の報酬しか与えません。個人の貢献度が考慮されることはなく、優秀さに対する物的報奨は一切排除されていました。

労働者は、その人の個性に応じた仕事をするわけではなく、国が必要と認めるところにただ配置されるだけでした。

国家は個人が何を求めているのかわかっているーそれがこの国の思い上がった過ちでした。

どんなシステムの組織であれ、個人が才能を発揮することを許さないような仕組みでは、旧ソ連と同じ失敗をすることになります。

成功する人は自分の仕事を自分で作り出します。

自分がもっとも得意とすることで組織に貢献します。

個人の才能によって仕事内容が広がり、変化していきます。

この動きを頑なに阻止し、厳密に各自の仕事を限定するような会社は、みずからパワーを切り捨てて、無能さをさらしてしまうことになるでしょう。

なぜ生来の才能だけに集中してその力を最大限に活用せず、成功できないまま終わる人がこんなに多いのか。

生まれ持った才能を信頼してそれに打ち込むことができず、かわりに成功の見込みのない仕事をこなそうと、時間を浪費するのはなぜなのか。

満足のいく結果を得るのに必要なものが揃っていながら、それ以下の結果しか望めない場所にとどまっている人が多いのはなぜか。

先人達の過ちから学びましょう。

自分の才能だけにすべてを集中させるのです。そうすることで、最後には自分の運命にたどり着けるでしょう。

⭐️ 生まれ持った才能だけに集中することで、その他大勢から抜け出せる。

そこそこで満足しない

エグゼクティブが、才能を十分に活かしきれないもう一つの要因は、才能を使わずにさびつかせていることです。

今のポジションでは自分本来の才能を発揮できないというのに、その仕事が「そこそこ」できればいいと考え、とにかく「現状維持」に努めようとします。

そういう人は自分の才能を活かすことも伸ばすこともしません。かわりに、まわりからの期待を裏切らないように最低限必要な能力だけでやっていきます。

自分の切り札を使うのではなく、まわりに求められていると思うもので応えようとします。

決して優秀な結果が出てくるわけではないですが、失敗することもありません。自分のもっとも優れた力を最大限に活かすのではなく、組織が何を期待しているかを考えてそれに合わせようとする。

これでは、生まれ持った潜在能力を活かしていないのだから、何とかこなす程度でそれ以上のことはできません。

使っていない能力は休眠状態に陥り、才能がさびついてしまうとキャリアにもひびきます。

だれもがもっとたくさんの潜在能力を持っているのに、開花させることもなく終わってしまうとは、本来達成できたはずの成功よりも小さな成功に甘んじることになります。

ビジネスで成功するには、あなたの才能を最大限に活かすことです。

このことを実証しているのが、プロゴルファーのブラッド・ファクソンです。

1984年の賞金ランキングでは124位で、何とかプロの資格を維持している状態でした。それでもウェッジとパターの技術は素晴らしいと認められていました。

彼は自分が苦手とするボールをまっすぐ飛ばすことと、スウィングをパワーアップすることばかりに練習時間を費やしていました。

そのころ、著名なスポーツ心理学者ボブ・ロテラと会って、力を注ぐところをまちがっていることを悟らされ、得意なことに集中するようにと励まされました。

「世界一の飛ばし屋になる必要などない。グリーン周辺のプレイではだれにも負けないし、気持ちだって負けていないんだから」とロテスは言ったという。

このアドバイスを心に留め、ファクソンはグリーンでのプレイだけに集中して、さらにその力を伸ばしました。

全米プロゴルファーでも、パターではファクソンが最高だと広く認められるようになりました。結果、ライダーカップ米国代表チームのメンバーに二度選ばれ、1996年には賞金ランキング8位の座に輝きました。

ロテラはファクソンの成功についてこう語っています。

「彼は、他の人のようにプレイしたいと望むのをやめ、自分のゲームのやり方を愛せるようになったのです」

⭐️ 本来できたはずの成功よりも、小さな成功に甘んじない。

他人の才能を妬まない

自分の才能以外のことにこだわったために、キャリアも私財もふいにしてしまった人は少なくありません。

なかでも悲惨な例の一つが、アメリカ独立戦争時、大陸会議代表で連合政府の財務総監だったロバート・モリスです。

彼は海運業で多大な成功をおさめた商人でした。ウィリング&モリスという会社を営み、1760年代から1780年代にかけて、フィラデルフィアとカリブ諸島との貿易では最大の取扱高を誇っていました。

財務力に優れ、鋭敏な商才に恵まれていた彼は、15歳ですでに米英両側の小麦粉の買い占めに成功し、弱冠20歳にしてトマス・ウィリングとの共同出資会社を設立しました。

モリスの名は、混乱の続くアメリカ植民地にまたたくまに知れ渡り、商才に優れ、人格的にも信頼できる人物として有名になりました。

まだ銀行も株相場もなく、不公平な商取引を取り締まる規制法もほとんどない時代に、絶対信頼できる人物として評判になった彼は、当時植民地の各州の連携を図っていた大陸会議において、満場一致で初代代表に選出されました。

独立戦争の勝利は、モリスが財務総監として果たした役割が大きい、と多くの学者が論じています。当時は、各州内で課税に反対する気運が強く、(これに先だって、英国による「代表なき課税」をめぐって紛争が起きていた)、モリスは直接課税なしで軍事資金を調達する方法を考え出しました。

彼が代表に任命される前は、経済的にかなりひっ迫した状況に陥っていて、ワシントン将軍は(本当に思っていること以外は言わない人だった)、兵士たちに給与と食料を与えるよう手を打たなければ軍隊を解散する、と宣言していたほどでした。

モリスは就任後、3日と経たないうちに財政プランを作り上げました。 のちにこのプランが発展し、最初の国立銀行と公債システムが誕生することになります。

彼は自分に寄せられる信望と評判を利用してフランスから融資を受け、裕福な入植者たちに出資させて、軍へ支給する資金にあてました。

戦争終結後、モリスはまた商人としてビジネスの世界に復帰しました。戦時中の困窮がまだ尾を引いている世情にもかかわらず、彼は躍進を続けました。

しかし、1790年代になると未経験の領域にまでビジネスの手を広げるようになりますー土地投機です。

当時多くの人が考えたように、不動産は将来への投資になると確信したモリスは、バージニア州とニューヨーク州に広大な土地を購入し始めました。

「不動産で儲ける才覚など持ち合わせていないのだからやめたほうがいい」というジョージ・ワシントンらの説得にも耳を傾けようとはせず、計800万エーカーという国内最大の土地所有者になりました。

貿易業が現金商売で三か月後には収益を手にできたのに対し、不動産業は利益が上がるまでもっと長い期間がかかるという点をモリスは見逃していました。

それに加え、不動産相場では、ほんのわずかな市場の変動(新境地を求めて建立されたばかりの国では、評価額が始終大きく変動した)によって、軽率な土地投機で大失敗する恐れがあります。

そして、まさにそうした相場の下落が原因で、モリスは財産も土地も失って債務者刑務所(当時はまだ破産法などなかった)に入れられた。 その後まもなく、300万ドルという当時にしては、巨額の負債を抱えたままこの世を去った。

モリスに関する詳細な伝記が20世紀初頭にいくつか書かれている。彼は財務家として非常に優れた才能を持っていた。ビジネスを生み出して投資するという才覚は、当時としては斬新だった。

しかしどの伝記でも、不動産業における彼の失敗はただの不運によるものではないと述べている。

他人が土地投機で大儲けしているのを見た商才あるビジネスパーソンが、自分の力量も考えずに手を出した結果なのです。

自分の長所から目を逸らし、他人の力を前にして自分の才能を見失い、違う自分になろうとした。その結果、すべてを失うことになったのです。

モリスの悲劇が示しているように、「人の才能を妬む」ことはまさに自分の身の破滅を招く行為そのものです。

目の前にあることを解決できないという現実問題があるのかもしれないが、この姿勢を続けているといつか必ず失敗することになります。

どうしても状況に対処することができないと日頃から感じているのなら、その状況のほうを変えるべきです。 あなた自身を曲げてはいけない。

成功の絶対条件は、才能を活かす状況に自分を置くことです。

上手になりたいとあこがれていることではなく、本当に自分が得意とすることに全力を注ぐべきです。

⭐️ あなたの長所から目を逸らさない

長所を伸ばす

成功するために、弱点を克服しようとする人は多い。

ビジネス書を読んだり、セミナーに主席したり、とにかく何でもやってみる。

しかしどんなに補修をやってみたところで、弱点が完全に克服されることはほとんどありません。

弱点は長所によって克服できるのです。

ただひたすら、自分の得意なことだけに取り組めば、長所にさらに磨きがかかり、ますます上達していくでしょう。

そうなると、弱点に伴う不利な条件は減っていきます。

弱点はそのままでいいー長所によって弱点を解消することができるのです。

このことは、弱点を覆い隠して目に入らないようにするのではありません。

むしろ弱点をよく知って、仲良くやっていこうという姿勢が大切です。

とにかく自分の弱点をきちんと知ることです。弱点を知らなければ、長所だってわからないのだから。

弱点を補ってくれる人をそばに置くのもよいです。

貴重な時間とエネルギーは長所のために使うべきです。

そうすれば、どんな弱点も、才能の力で乗り越えることができるようになります。

⭐️ 弱点はそのままでいい。

転職する

仕事を辞めるべき潮時をみきわめなければならないときが、いつか来るかもしれません。

自分に欠けている専門知識を絶対に必要とするような状況が強いられるとき、あるいは仕事に才能を活かすチャンスが十分に与えられないとき、それは別のところへ移るべきときが来たということです。

そのまま現状にとどまっていても、せいぜい良くて暇つぶしにしかならず、最悪の場合、その人の評価が台無しになることもあります。

ビジネスで成功をつかむには、現実を見る目を曇らせてしまう不安を解消し、才能こそ成功への導き手だと信じて、自分の弱点を補うところから始めましょう。

自分の中にある最高の力がわき上がってくるにまかせ、その潜在的な能力を最大限に発揮できるように努めるのが大事です。

⭐️ そのまま現状に留まっていても何も変わらない。

的を絞る

これまで仕事でエグゼクティヴに接してきて、次のような言い分をよく耳にしました。

「私の才能を活かせるような仕事ができたらどんなにいいか。でも現実はそうはいかない。いったいどうしたらいいんでしょうか。」

才能を活かせない仕事をしているとわかっているのなら望みはあります。 才能に合うように仕事の形態を変えればいいのです。

ときには、特に今のような変動の激しい企業社会では、気づいたら自分の才能に少しも合っていない仕事をしているという可能性もあります。

また、組織再編によって最適な人材が見つからないポジションが新設されることもよくあります。その結果、才能に適していないポジションへいつ移動命令が下されるとも限りません。

そこでまず、その仕事の中に自分が得意とする要素を見つけてみましょう。

これといったものがない場合は、自分の得意な分野に向けてその仕事を拡げられないか考えてみることです。

どんな仕事も変化する可能性があるわけだから、その変化をうまく利用して自分に適した形態になるようにしてみるといいです。

ダンの例。彼は、ある一流企業の人件費関連を担当する責任者です。

大学卒業後、入社してすぐ人事部に配属になり、以来ずっと人事畑でキャリアを積んだのち、社内最大の事業部内の他のマネージャーたちと連携して優れた働きを見せ、労働契約にかかわるどうしようもない事態が持ち上がると、マネージャーたちは適切な解決法はないかと彼を頼ってくるようになりました。ダンは素晴らしい交渉力の持ち主でした。

ダンにはこうした長所がありましたが、数字にはめっぽう弱く、人件費を担当することになって、一層それを思い知るようになりました。

これまではたいてい別のだれかが経理面を担当していたので、困ったことにはならずにすんでいました。

人事担当重役に命じられて、人件費関係全般を統括する責任者に就任するまでは、ダンの弱点は特に問題にはならなかったのです。

就任後、ダンは自分の得意分野に的を絞りました。組合との団体交渉と対外的な契約交渉です。

給与手当の方針は大部分が労使間の交渉によって決められるので、労働組合と話し合って最善の合意を得るという仕事に力を注ぎました。

特別手当を組み合わせた給与体系の基準を定めるにあたっては、数字に強い人材を数人雇い、給与プランを充実させるのに成功しました。

その仕事に一年間取り組んだあと、次に着手したのは、会社が社員の健康管理のために契約している医療機関や、整理再編を進めている下請け会社、人材派遣事務所などとの契約交渉でした。

ここでもやはりすべて良好な合意にこぎつけることができ、人事予算の大幅削減に貢献しました。

一般的に見て、人件費担当の責任者として成功している管理職といえば、複雑な給与体系や手当明細、年金制度などを理解し、それを読み解くことを楽しむとするような人を思い浮かべます。

しかし、ダンはまったく正反対です。

それでも彼は自分の才能に合うように仕事内容の方向性を変えました。

その結果、当初は彼の能力には適さないと思われた仕事で成功することができたのです。

苦手だとわかっている作業が任務上必要になる場合、その作業の専門家に委託する方法を探してみましょう。

委託が可能ならば、優秀な人材を登用しましょう。

あなたとよく似た才能の持ち主ではなく、あなたに欠けている部分をその人の才能が補ってくれるのが望ましいです。

専門家への義務委託は、エグゼクティヴにとっては絶対に不可欠なものです。

いずれさ手に余るような状況にだれもが直面します。

助けてくれるスタッフを雇うというケースもあれば、大統領補佐官のように、舞台裏で働いてくれる「陰の相談役」に情報を与えてもらい、進路を誤らないようにする方法もあります。

自分で対処できる状況であっても、自分の力だけで上昇していくのではなく、慎重に自分の弱点を補いつつ進んでいくのが、成功者のやり方です。

⭐️ 仕事の中に得意な要素を探す。 ない場合は得意な分野に向けて拡げられないか考える。

満足感があるか?ないか?

自分の才能を見つけるためのもう一つの徴候は「満足感」です。

才能を活かして何かに取り組んでいるときや、特に努力して自分の能力が向上したとわかったときには、気分が良いです。

才能を発揮しているときには、自分は意義のあることをやっているという強い満足感が伴うものです。

かつて大手販売会社のコンサルティングをしていたとき、二人の地区統括マネージャーと会いました。

担当地区が別々ということを除いては、二人の仕事内容はまったく同じで、地区内の各店舗の店長経験もそれほど差はなく、売上報告の数字もほぼ同じでした。

一人目の名前はトム、キャリアのほとんどを地区統括マネージャーとしてやってきた人です。

トムはこれまでに数社、全国的に事業展開する企業に勤めた経験があります。そこでもだいたい地域の統括管理の仕事をしていて、支店訪問でずっと出張ばかりしてきました。

50過ぎという年齢にもかかわらず、いつも過酷な出張スケジュールをこなしています。社内の人望も厚く、新米の地区統括マネージャーを指導する役目を引き受けることも多いです。

もう一人はジュディで、地区統括マネージャーの地位に就いて10年以上の上昇志向の強い女性でした。

残念なことに彼女は他人と一緒に働くという才能に欠けていたため、店長たちとの関係はひどい状態になっていました。

数年にわたり、個別コンサルタントでもジュディを見てきました。やがて彼女は、仕事が嫌いでたまらないと打ち明けました。

しかし、今の地位を得るためにずっと頑張ってきたのだから辞める気にはなれないし、別の仕事で同じくらいの給料を得られるかどうかも不安だ。

そう言っていた彼女は、合わない仕事で成功をつかもうとしたストレスがたたって、とうとう会社を辞めてしまいました。

トムはジュディより20歳も年上という年齢をものともせず、さらに快進撃を続けました。

仕事のプレッシャーも、彼にとっては自分の力の限界を試す挑戦のようなもので、みずから進んで喜々として取り組んでいました。

トムは自分の仕事にとても満足していました。

二人の違いは、才能がもたらす満足感があるかどうかです。 仕事により、トムの心には栄養と潤いが行き渡りました。 一方、ジュディの心は干上がり、消耗してしまいました。

自分の才能に向き合っている場合は、トムと同じ状態にいることができます。

大きなプレッシャーを抱えて、肉体的には疲れ切っているとしても、心は満たされ、前向きな気持ちで仕事ができるでしょう。

これだけで最高の人生を手にできるという保証にはならないが、最高の適所を見つける目印にはなります。

⭐️ あなたは喜々として仕事にとりく めていますか?

夢中になる

意志の力で才能の開花をコントロールすることはできません。自然の流れに任せるしかないです。

しかし、才能が花開くそのときには一般に次のような徴候が見受けられます。

才能の徴候の一つは「熱望」です。

熱望とは、心をとらえて離さず、駆り立てられるような吸引力を感じるといった、強いあこがれの感情です。

イエール大学の学生だったフレッド・スミスという青年が、三年生のときにある論文を書きました。

ハブ・アンド・スポーク方式を利用して航空貨物の夜間輸送をおこなうアイデアについて述べたものです。

空路と陸路を組み合わせることで翌日配達が実現可能だと考え、この効率的なシステムの将来性に彼は夢中になりました。

しかし、このシステムを国内全域に構築するには莫大な費用がかかるうえ、始業第一日目からシステム全体を完璧に機能させなければなりません。

そんな厳しい条件にもかかわらず、彼は卒業後もこのアイデアを主張し続けました。

専門家もビジネス・アナリストも、誰もが実現不可能だと断言しました。

しかし、スミスはあきらめず、出資者を募って7200万ドルの資金を調達し、ついに会社設立にこぎつける。

こうして誕生したのがフェデラル・エクスプレスです。

1973年3月12日、業務を開始したフェデラル・エクスプレスは、国内各地の拠点から貨物便を飛ばし、本拠地メンフィスに終結させました。

このとき扱った荷物は、驚くなかれ、合計六個。開業から数年間は赤字続きで何百万ドルもの損失を出しましたが、やがてようやく黒字に転じ、今では世界的に事業を展開している業界トップの企業です。

すべては一人の大学生の熱い思いから始まりました。

しかし、熱望だけでは才能を見つけるのに十分とはいえません。

自分には向いていないことでもやりたいと思った経験はだれにでもあるはずです。

文学史上に残るような小説を書く、メトロポリタン歌劇場の舞台で歌う、グルメも唸るような料理を作るーこうした夢へのあこがれは、たいてい、名声や華々しさや刺激といったものを求めて描いた幻想なのです。

華やかさへのあこがれによって、選ぶ道を誤るということを実証している調査結果があります。

スタンフォード研究所が、大手航空会社の客室乗務員を対象におこなったアンケート調査の結果です。

それによると、世界各国へ旅ができるといった華やかさにあこがれてこの仕事を選んだ人は、勤務評価が低く、勤続年数も短い(一年半以下)という傾向があります。

それに比べて、人々に気持ちよく過ごしてもらうことに喜びを感じるからこの仕事を選んだという人は、おしなべて評価が高く、ずっとキャリアを重ねていく傾向がありました。

熱望だけで才能を特定することはできませんが、熱望はつねに才能に近いところにあります。

人は自分が得意とする分野に自然と引き寄せられるものです。

熱望が才能のありかを示しているのです。

⭐️ あなたの心をとらえて離さないものとは何か

自分と向き合う

人はだれでも独自の才能を持っています。それぞれに長所があり、興味を持っているものがあります。

休眠状態かもしれませんが、どこかに潜んでいます。育ってきた環境、社会的地位、経済状態、学歴、性格ーそういった条件さ関係ありません。

才能を発見するにあたって最大の障害物となるのは不安感です。

結果を恐れて自分を抑え、才能に向き合ってもいないような時点で、もう限界だと線引きをしてしまう。

不安感から、自分には才能はないとついつい思い込んでしまうのです。

不安感は資金不足、知識不足、社会からの批判などを鋭く察知するため、仕事やキャリアの成功のみならず、美術や文学といった芸術的才能の開花も阻害します。

不安を取り除くように努めると、才能が浮かび上がってくるようになります。

才能を発見しようと躍起にならなくてもいいし、苦労して才能探求の旅を続ける必要もありません。

不安の足かせから解放されると、自然に才能が浮かび上がってくるようになります。

特に努力しなくても、才能を活かしていることに気づくでしょう。

⭐️ 不安を取り除くと、才能は自然と浮かび上がってくる。

才能とは何かを理解する

才能とは生まれ持った潜在的な能力で、得意分野を決定します。 どのような人生を送るかは才能から始まり、その才能を本人がどう扱うかによって決まってきます。

仕事であれ何であれ、とにかくあなた独自の才能を発揮するのに妨げとなっているものがあると、最終的な満足感も目標達成の可能性も失われて、最高の人生を実現できなくなります。

才能とは何かを理解するために、まず知っておいてほしいものが二つあります。

「アドバンテージ(強み)」と「スキル(技術)」

自分を他人よりも有利にしてくれるものが「アドバンテージ」です。 いろいろ考えられますが、いくつか例をあげると、学歴、財産、頭の良さ、人を惹きつける性格といったものがあります。

ただし、アドバンテージは才能を後押しするだけのものであり、決して才能そのものになることはないです。

しかし、人事採用にあたっては、残念ながら、このアドバンテージと才能とが、混同されることが多いです。

実際、履歴書を書くこと自体がアドバンテージ側に傾いた行為だといえます。

学位や資格、課外活動、立派な身元保証人といった事項を履歴書に書き並べるのは簡単ですが、才能を言葉で表すのは難しく、説得力のある表現で伝えることはなかなかできません。

ただ、アドバンテージは才能の強力な味方になってくれます。

経理の才能があるのなら、会計学の学位を取得し、会計士の資格を持つことで才能が大きく後押しされるでしょう。

学歴と同じく、知能の高さは才能ではなくアドバンテージです。

1912年、スタンフォード大学の有名な心理学者ルイス・ターマン教授は、知能指数がその人の一生に及ぼす影響について研究を始めました。

天才児レベルの知能を持つ1470人の子どもを選び出し、その後の人生を追跡調査しました。彼の引退後はロバート・シアーズとポーリーン・シアーズの両博士に引き継がれました。

半世紀に及ぶ研究の末、研究結果が発表されました。

それによると、対象者のうち、立派な成功をおさめた人と、あまり成功しなかった人や失敗した人、その運命を分けたものは「慎重さ、思慮深さ、意志の強さ、忍耐力、希望といった資質のほか、才能に適した道を選び、その道に専念して努力したかどうか」だといいます。

研究対象になった子どもたちも今では老齢に達し、知能だけでは人生の成功は保証されないということを体現しています。

成功した人たちは自分の才能を信じ続けることで成功したのです。

もう一つ、才能とよく混同されるのが、「スキル」です。

スキルは訓練を繰り返すことで身につけた能力で、その分野に必ずしも才能があるとは限りません。

だれもが自分の体得したスキルをいくつも並べ上げることができると思いますが、やっていて特に楽しいと思えなかったり、ほとんど才能が感じられないようなものもあるはずです。

スキルの中でもよく才能と混同されるのが、実戦経験です。

長年一つの仕事をやってきたからといって、その仕事が得意だとか、うまくこなす力があるとは限りません。

教育と同じで、才能は経験によって伸びていきます。

ある仕事に才能を持っている人は、その仕事をしていく中で才能を発展させて成長していき、経験を積めば積むほど力をつけていきます。

しかし、その仕事に関する才能がないまま経験を重ねたとしても、平均的な結果しか出せないし、成長も望めません。

何より憂うべき点は、貴重な時間とエネルギーを才能のない仕事に浪費して、本当に才能のある分野で成長して成功するために使っていない、といことです。

一般的に「性に合わない」仕事でも、苦労を重ねて新しいスキルを身につけていくのが出世への道だと考えられています。

これが実践されると、新米の管理職たちは、オールラウンドに何でもこなせるエグゼクティブになるためという名目で、自分の興味も情熱も才能も顧みることなく、自分に適していない部署を渡り歩くことになります。

しかし本当のところ、自分に合わない仕事を経験しても、せいぜい新しい知識を得るという程度で、新しい才能を発揮するようになるわけではありません。

こうした道をたどって出世する人というのは、それぞれの任務に自分の能力を活かすチャンスを見つけた人たちなのです。

⭐️ 学歴、知能、経験は才能の味方だが、才能そのものにはならない