「資源」視点で経済を考える
世界に存在する土地と資源には限りがあります。
人口増加や経済発展にしたがって増えることはありません。だからこそ争奪戦が繰り広げられるのです。
日本は資源小国であり、自給できると考えられるのは硫黄と石灰くらいです。
これだけで工業製品を作るのは不可能です。そのため鉄鉱石や石炭、石油、天然ガスなどの原燃料をほぼ輸入でまかなっています。
鉄鉱石はオーストラリアやブラジル。石炭はオーストラリアやインドネシア、カナダ。石油はサウジアラビアやアラブ首長国連邦、クウェート、カタールといった中東の産油国。天然ガスはオーストラリアやマレーシアなどからそれぞれ輸入しています。
これらの国々と良好な関係を保つのは必須といえます。
加えて、中東諸国と日本を結ぶルート上には東南アジアが位置しているため、日本は東南アジア諸国とも良好な関係を築く必要があります。
もっとも、資源輸出国は輸出余力が大きいから輸出が可能なのであって、今後の経済発展によって国内需要が高まり、輸出余力が小さくなる可能性も考えられます。
また中国やインドといった人口大国の経済発展により、両国の原燃料需要が高まると、世界市場での資源争奪戦が激しくなり、原燃料の調達が容易ではなくなります。
中東情勢とは関係のないところで「オイルショック」が起きることも十分に考えられるのです。
日本は森林面積の割合が68.5%と高く、森林資源が豊富に存在しますが、日本列島のおよそ7割が山地や丘陵地であるため、森林を伐採し、それを運搬するのが物理的に困難です。
そのためカナダやアメリカ合衆国、ロシアなどから多くの森林資源を輸入しています。
また年降水量がおよそ1800mmと多く、水資源に恵まれますが、山地や丘陵地が多いため、雨水が短時間で海に流れ出てしまいます。
そのため適宜ダムを造ることで水資源を確保し、河川の流量を調節することで大雨に対応しています。
資源は、国のおかれた自然環境によっても利用可能な量が変化します。
「地の利」を活かせる国があれば、恵まれない国もあります。
限りある資源の調達には、こうした「背景」を熟知することが欠かせません。