ジョンは、ファッション業界のバイヤーになろうと心に決めていました。
デザイン学校で勉強したあと、運良く、アメリカで一番ファッショナブルなデパートの一つに就職することができました。
最初の仕事の肩書はアシスタント・アナリストで、バイヤーが決めた買い付けの注文書の作成から、デパート全体を統括する小売業アナリストに提出するための売上集計まで、まかされたのは細々とした書類仕事ばかり。
かっこよくてファッショナブルな仕事とは程遠いかった(ジョンはバイヤーの仕事はそうでなければと考えていた)。
デザイン学校の先生に、大いに才能があると認められた彼は、自分はもっとできるのにと考えるようになりました。
結局、今の仕事内容は希望どおりというわけではなかったのです。
一年後、彼は退社し、別の販売会社に就職して、流行の最先端からは少し離れることになりました。
その後も数々の会社で経験を積んだあと、ついに大手ディスカウントストアのバイヤーの地位を獲得しました。
その会社は大量販売に重点を置いていて、バイヤーに求められるのは、いかに安く買い付けて大量に売りさばくか、ということだった。
ジョンはこの販売哲学を嫌い、できるかぎりの方法で対抗しました。
しかし売上実績はあまりぱっとしないまま数年が経ち(この店の客は、ジョンが苦心して品揃えした最新流行のものではなく、安い商品を求めて買い物に来る)、解雇されました。
小売業界での仕事に熱意を失った彼は、人材派遣会社で働くようになりました。
もしジョンが下積みの仕事を厭わずに学ぶ姿勢で取り組んでいたら、とても大切な真実を発見していたことでしょう。
第一に、小売業界のバイヤーというポジションは、流行や美意識よりも、売上と収益と市場分析力が問われるという事実を知ることになったはずです。
第二に、それでもバイヤーになりたければ、新製品の専任担当者として起用してくれ、なおかつ数字的なことをすべてまかせられるアナリストをつけてしっかりバックアップしてくれるような会社で働くしかない、と見きわめられたでしょう。
そして最終的には、自分の才能が本当に発揮できるのは、商品企画であることに気づいたかもしれません。
謙虚に学ぶ姿勢を失わずに下積みに取り組んでいたら、ジョンはファッション業界で頭角を現すチャンスをものにしていたでしょう。
おかしなことだと思うだろうが、下積み時代に学ぶべきことを学んでおかないと、いつまでもしつこくその課題につきまとわれることになります。
自分自身の経験をもう一度見直してみましょう。
下積み時代の仕事はあなたにどんなことを教えようとしていただろうか。
そしてあなたは何を学んだだろうか。
下積みの仕事をやり通さなければ、成功へ続く道の次の段階に進むことはできません。
単純だが実に奥の深い課題が待っています。
あなたの才能とは何でしょう?
心から楽しいと感じるのは何をしているときでしょうか?
次に進むためにはその答えを見つけられなければならないのです。
⭐️ 下積み時代に学んでおかないと、いつまでもしつこく同じ課題につきまとわれる。