意志の力で才能の開花をコントロールすることはできません。自然の流れに任せるしかないです。
しかし、才能が花開くそのときには一般に次のような徴候が見受けられます。
才能の徴候の一つは「熱望」です。
熱望とは、心をとらえて離さず、駆り立てられるような吸引力を感じるといった、強いあこがれの感情です。
イエール大学の学生だったフレッド・スミスという青年が、三年生のときにある論文を書きました。
ハブ・アンド・スポーク方式を利用して航空貨物の夜間輸送をおこなうアイデアについて述べたものです。
空路と陸路を組み合わせることで翌日配達が実現可能だと考え、この効率的なシステムの将来性に彼は夢中になりました。
しかし、このシステムを国内全域に構築するには莫大な費用がかかるうえ、始業第一日目からシステム全体を完璧に機能させなければなりません。
そんな厳しい条件にもかかわらず、彼は卒業後もこのアイデアを主張し続けました。
専門家もビジネス・アナリストも、誰もが実現不可能だと断言しました。
しかし、スミスはあきらめず、出資者を募って7200万ドルの資金を調達し、ついに会社設立にこぎつける。
こうして誕生したのがフェデラル・エクスプレスです。
1973年3月12日、業務を開始したフェデラル・エクスプレスは、国内各地の拠点から貨物便を飛ばし、本拠地メンフィスに終結させました。
このとき扱った荷物は、驚くなかれ、合計六個。開業から数年間は赤字続きで何百万ドルもの損失を出しましたが、やがてようやく黒字に転じ、今では世界的に事業を展開している業界トップの企業です。
すべては一人の大学生の熱い思いから始まりました。

しかし、熱望だけでは才能を見つけるのに十分とはいえません。
自分には向いていないことでもやりたいと思った経験はだれにでもあるはずです。
文学史上に残るような小説を書く、メトロポリタン歌劇場の舞台で歌う、グルメも唸るような料理を作るーこうした夢へのあこがれは、たいてい、名声や華々しさや刺激といったものを求めて描いた幻想なのです。
華やかさへのあこがれによって、選ぶ道を誤るということを実証している調査結果があります。
スタンフォード研究所が、大手航空会社の客室乗務員を対象におこなったアンケート調査の結果です。
それによると、世界各国へ旅ができるといった華やかさにあこがれてこの仕事を選んだ人は、勤務評価が低く、勤続年数も短い(一年半以下)という傾向があります。
それに比べて、人々に気持ちよく過ごしてもらうことに喜びを感じるからこの仕事を選んだという人は、おしなべて評価が高く、ずっとキャリアを重ねていく傾向がありました。
熱望だけで才能を特定することはできませんが、熱望はつねに才能に近いところにあります。
人は自分が得意とする分野に自然と引き寄せられるものです。
熱望が才能のありかを示しているのです。
⭐️ あなたの心をとらえて離さないものとは何か
