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臨場感を覚える世界が「現実」である
小説を読んで泣いたり、映画を見てドキドキすることについて、みなさんは当たり前の出来事だと考えて、日ごろ特別に意識したことはないかもしれません。
しかし、架空の世界に臨場感を感じて影響を受けるということは、脳が進化の過程で獲得したとてつもない機能の一つなのです。
私たち人間は、手でさわれないもの、耳で聞こえるもの、目で見えるもの、つまり物理空間の存在に強い臨場感を感じています。
しかし同じように、手でさわれないもの、耳では聞こえないもの、目には見えないもの、つまり実体をもたない情報空間に対しても、私たちは臨場感を感じ、強い影響を受けているのです。
実は、脳にとってはどちらも同じことです。物理的存在であろうと、情報的存在であろうと、臨場感を感じられさえすれば、脳はそれをリアル(現実)ととらえて、生体が反応するのです。
臨場感が強ければ強いほど、情報場のコントロールが容易になるのです。
過去の体験を利用して臨場感を強化しよう 「臨場感と五感のリンク瞑想」
解説
臨場感を強化するためには、知識と経験が豊富であればあるほど有利です。
いかに強い臨場感で抽象思考しようとしても、まったく知らない世界のことは認識できません。
とはいえ、知識・経験が少ないからといって、あきらめることはありません。
人間には「ゲシュタルト能力」があるので、知らない事象であっても類似の知識や経験を駆使して臨場感を強めることができるのです。
たとえば、「ハワイにいる自分」を瞑想するとします。実際にハワイに行ったことがあれば、そのときの知識や経験をベースにして瞑想してください。
明るく澄みきった青空、広い海で泳ぐ気持ちよさ、街のざわめき、ビーチの開放感などを心のなかで再現するのです。
もしハワイに行ったことがなくても、日本の海で泳いだ経験やハワイに行った友人から聞いた話、テレビや雑誌などで見聞きしたハワイの知識があれば、強い臨場感をもって「ハワイにいる自分」を瞑想することができます。
ワーク
ステップ1 過去の出来事から喜怒哀楽の感情を思い出し、その感情から体感を引っ張り出す
過去の出来事(実際にハワイに行った経験、もしくはそれに類似する経験)からうれしい、楽しい、気持ちいい、面白い、清々しいなどの感情を思い出し、次にそれらをリアルな体感として感じてください。
たとえば、楽しければ身も心も弾みます。
面白いときは笑い過ぎてお腹がよじれそうになります。
清々しいときは心が軽くなるように感じます。
悲しいときは胸が苦しくなります。
怖いときは足がすくむ感じがします。
感情は、必ず何らかの体感を伴います。難しく考えず、感情に伴う体感を素直に思い出すのです。
ステップ2 体感を少しずつ強化する
ステップ1で引き出した体感のままでは抽象度が低く、ステップ3にうまく移行できません。そこでこのステップ2では、体感を少しずつ強化します。
体感や感情をいきなり二倍、三倍にするのは難しいですが、人間の無意識はあまり賢くないので、一割増しぐらいならば簡単にできます。
まずはちょっと一割増しぐらい強めて、それができたらさらに一割増し、と徐々に強めていきましょう。
「うれしい」はもっとうれしく、「楽しい」はもっと楽しく、といった感じです。
体感が一割増しになるたびに、抽象度も少しずつ上がっていきます。
二倍、三倍ぐらいに強化できれば、体感はかなり抽象化されています。
ステップ3 体感を色や音、触感などで表現する
強化した体感を、次は色、音、におい、味、皮膚感覚など別の感覚に書き換えます。
この書き換えには決まったルールはありません。
「楽しくて身も心も弾んでくるような体感は、赤い色」「面白くてお腹がよじれそうな体感は、ピンポン玉が跳ねる音」「清々しさで胸がスーッとする体感は、ミントのにおい」など、自分が感じるままに書き換えます。
このとき、もともとの感情の臨場感も維持するように意識してください。
先ほどの例でいえば、「赤い色を思い浮かべると、身も心も弾んでくる」「ピンポン玉の跳ねる音をイメージすると、お腹が苦しくなるほど笑えてくる」「ミントのにおいを感じると、心がスーッと軽くなる」 というように、臨場感と五感による書き換え情報がリンクするようにするのです。
余裕が出てきたら、ステップ3の状態でさらに臨場感を一割ずつ強めていくといいでしょう。
色をどんどん濃くしたり、音を大きくしたり、香りを強くするだけで、簡単に強めることができます。
このトレーニングを繰り返すことで、抽象度の高い情報空間で強い臨場感を維持するコツを身につけることができます。
