資本主義の暴走と弁証法

資本主義の特徴は、お金持ちはどんどんお金持ちになり、貧乏な人はどんどん貧乏になることです。

10人の住人しかいない世界を想像してみましょう。

彼らはそれぞれ100万円の資産を持っています。だから世界の富は合わせて1000万円です。

そして10人のうち、資本家は1人だけです。 彼のビジネスは急成長しており、1年の間で財産が15%増加しています。時間が経つと何が起こるだろう?

10年後、資本家の財産は400万円を突破していました。それから5年が経つと資本家の財産は800万円を超えます。

この世の富は全部で1000万円だから、残りの9人の財産を全部合わせても200万円です。資本家一人の財産が残り9人の財産の合計の4倍となります。

もちろん現実の世界では資源の採掘などで世界全体の富が増大するから全世界の富が1000万円にとどまることはないですが、重要なのは地球のリソースには限界があるから、世界の総生産は複利で増加することはない、反面、資本家の富は複利で増大することです。

もっと簡単に考えるなら、さっきの事例の資本家が銀行の所有者だとしましょう。

彼は貸し金業で利子を得るから、財産は複利で増大します。 もちろん15%よりは低いだろうが、資本が複利で増大するスピードは、世界の総生産が増大する速度を上回ります。

従って、資本家が持つ富以外の富は減少しなければなりません。

この世に自己増殖する富が存在する以上、お金持ちはどんどん多い富を所有するようになり、それに伴って残りの人の財産は減少していくのが資本主義社会の宿命なのです。

マルクスは「弁証法」によって、このような矛盾を持つ資本主義が、新しい価値観に取って代わられると予想しました。

弁証法とは何か?これは古代ギリシャで「問答法」と呼ばれた方法であり、ヘーゲルによってその形式が確立されました。 インターネットの掲示板のスレッドを想像すれば分かりやすいです。

最初の誰かが、「犬は猫よりも主人を愛する」と主張したとしましょう(命題)。

すると、他の意見を持つ人が「犬は集団生活をする動物だから、そう見えるだけだ。実は猫の方が主人を愛する」と反論します(反命題)。 すると「猫も犬も、表現する方法が違うだけで主人への愛は持っている」とコメントが付きます。

これは命題と反命題を本質的に統合した命題なので、合命題と呼びます。

このような過程を続けて論理的に考えていくと、人間が考え得る、もっとも正しい結論にたどり着くというのが弁証法の概念です。

「命題→反命題→合命題」の形式を「正反合」とも呼びます。

弁証法を簡単に言い換えると「論理的な類推」「科学的推論」にあたります。

マルクスの「資本論」も、「富は商品の集まりだ」という命題から出発し、実に論理的に理論を展開していることが分かります。

とにかくこうして弁証法、あるいは論理的な推論を通じて、資本主義の問題が発覚すれば人々はそれを改革するために立ち上がるだろう、とマルクスは予想しました。

だが結局、共産主義は「次の体制」になることに失敗しました。

この資本主義が永遠に続くのか、それとも他の体制が資本主義を変革したり、あるいは取って代わることになるのか、それはまだ誰も知らない未来の話です。

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