資本が巨大になるメカニズム

目次

単純再生産

社会は消費を中断することはできないし、生産も同様です。

従って生産過程の全体を見ると、すべての生産プロセスは再生産のプロセスでもあります。

例えば、今年100万円の資本が20万円の剰余価値を生み出したら、その過程は翌年にも繰り返されなければなりません。

周期的に作られる剰余価値を資本家がそれを得るたびに消費してしまえば、それは「単純再生産」です。

この再生産はただ、過去の規模を維持しながら生産プロセスを繰り返すだけだが、不連続なプロセスとは明確に違います。

2つの消費

労働者は2つの方法で消費します。

第一は「生産的消費」です。

労働者は自分の労働で生産手段を消費し、それを投下された資本より高い価値の商品に作り変えます。

これは労働者の「生産的消費」です。これは彼の労働力を買った資本家の消費でもあります。

第二は「個人的消費」です。

労働者は自身に支払われたお金を、自分の労働力を維持するために消費します。

これは労働者の「個人的な消費」です。労働者の生産的消費と個人的消費は完全に別物です。

前者の場合、労働者は資本家に属するが、後者の場合、労働者は自身に属します。

個人的消費

勤務日には、まるでエンジンに燃料を補給するように、労働者は自分の労働力を維持するために個人的な消費をします。これは生産手段に必要な消費でもあります。

労働者の個人的消費は生産的消費になるので資本家は一石二鳥の効果を得ます。労働力を使った資本が生産の手段を維持するために使われたからです。

荷物を運ぶ家畜が草を食べることは家畜が好きでしていることですが、それは生産に必要なことです。

同様に、労働者階級が自分たちの生活を維持したり繁殖したりするのは資本の再生産の必要条件です。

だから資本家は皆、それを労働者たちの自己保存の本能に任せる一方、労働者の個人的消費を必ず必要な限界まで減らすようにします。

社員が会社で長い時間生活するようになると、個人的な消費と業務関連の消費の区別は曖昧になってしまいます。

そうなると、社員が自分のためにしている行為も、まるごと資本家の富を増大させるためのものになってしまいます。

これは資本家にとって一石二鳥です。そのうえ、資本家は社員が労働力を維持できる限界まで社員の個人的な消費にかかる費用を減らそうとし、それもまた資本家の剰余価値を増やしてくれます。

資本家の立場から重要なことは、社員に「自分は自分のために働き、休息している」という幻想を抱かせることです。

巧みに隠蔽すればするほど生産性は高くなり、社員の個人的な消費も資本家のものにすることができます。

労働者は自ら資本につながれる

資本主義的生産は労働者を搾取するための条件を存続させようとします。

つまり、労働者が生存のために労働力を売って、資本家を豊かにしてくれるよう仕向けます。

資本家は労働者が生産した富を利用して労働者を買います。

こうして労働者は市場で労働力の売り手として資本家と出会いますが、実は労働者は自分を資本に売る前から資本に隷属しています。

それは労働力の販売の周期的な更新と雇い主が変わることで隠蔽されています。

サラリーマンの労働が生み出した富は、その一部は会社がサラリーマンを雇用するお金になります。

サラリーマンは富を生み出していますが、それは資本家にタダで渡す分と、自分を資本に隷属させる分になります。

前者は剰余労働が生み出した富、そして後者は必要労働が生み出した富です。

生み出した富のすべてが資本への隷属を強化するという悪循環を起こしています。

これが、いくら社会が発達し、国家が発展しても被雇用者階級が裕福になることがない理由です。

そして、この構造を維持するのは、被雇用者自身の労働です。

一生懸命になって自分の足かせを作っているようなもので、労働者は努力すればするほど自分を資本につなぎ止めています。

資本の蓄積

剰余価値から資本はどう生まれるのかについて調べてみます。

剰余価値が資本に加わって、それが資本になることを「資本蓄積」と呼びます。

資本の蓄積のためには、剰余生産物の一部を資本に転化する必要があります。

そして、その転化は原料などの生産手段と労働者の生活を維持する生活手段のために行われ、それ以外のケースは存在しません。

そして、それらが資本として稼働するためには、資本家階級は追加の労働力を求めます。

こうして資本は賃金に依存する労働者階級をさらに雇い、資本は再生産の過程を通じてどんどん増大します。

資本が生み出した剰余価値の全部、またはその一部を資本家が消費せずに資本に付け加えることで資本は増大します。

再投資による生産手段(原材料と道具)の増加は、それを利用してさらにたくさんの商品を生産するために、追加の労働力が必要であることを意味します。

そこで資本家はさらに雇う。 このような過程が繰り返されることで生産規模は大きくなっていきます。

このような資本蓄積があるから、資本主義のシステムのもとでは、ある軋轢が生じます。

それは規模を大きくしようとする資本家間の軋轢です。

これまでは資本家階級と労働者階級の軋轢が必然的だとしてきましたが、これはもうひとつの争いです。

当然、大きい会社は小さい会社より有利だから、生き残るために資本家は自分の帝国を拡大しようとします。

資本家間の競争は資本家にとっても厄介だが労働者階級にとっても良いことではありません。

資本家間の競争がある以上、労働者から搾取できるだけ搾取し、剰余価値を絞りだす資本家が生き残るようになるからです。

資本家が皆、単純再生産で満足すれば、そんなことは起こりませんが、残念ながら資本というものは自分を拡大させようとする性質があります。

そして競争がある以上、資本はただ拡大するだけでなく、できるだけ早く拡大しなければなりません。

だからこそ、労働者から剰余価値を限界まで絞り出さなければならないのです。

貨幣資本の循環

貨幣資本の循環は3つの段階でできています。

1. お金→商品 (資本が資本で生産手段 と労働力を買う)

2. 商品⇒生産プロセス⇒商品’ (資本家は生産手段と労働力で商品を生産する)

3. 商品’→お金’ (資本家は自分が生産した商品を売り、お金を得る)

1段階における「お金→商品」における商品は、労働力と生産手段とで構成されます。

資本家が商品として買った労働力と生産手段は、生産のための生産資本です。

循環全体 お金→商品⇒生産プロセス⇒商品’→お金’

ピザ屋を例に考えてみましょう。 ピザ屋を開店した主人(資本家)は、お金で料理に必要な石窯やナイフやフライパンなどの道具を買います。 そして小麦粉やハム、ピーマン、チーズなどの原材料を買います。

これら道具と原材料は不変資本です

そして彼は、自分の従兄弟を調理を担当するシェフとして雇います。 それを手伝うアシスタントやサーブを担当する店員も雇います。 彼らは可変資本です。

お金で買った商品ー原材料と道具と労働力ーは、生産プロセスにより最終的には商品であるピザへと変身します。

ピザを作るためにかかった小麦粉やチーズなどの費用は自分たちの価値をそのままピザに移します。石窯などの道具にかかったお金は、その減価償却の分をピザに移します。

これら不変資本は最初購入した価値以上は生み出さず自分の価値をそのままピザに移すだけです。

だが、雇ったシェフやアシスタントや店員の労働は自分がもらう賃金以上の価値を生み出します。こうしなければ、店の主人は利益を得ることができません。

資本家が買った商品は、生産プロセスを通ったあとは「商品’」、つまりピザになるが、その価値は生産プロセスを通る前より増加しています。その増加分は雇ったシェフや店員などの労働力から出たものです。

生産資本の循環

生産資本の循環は、次のように表現されます。

生産資本→商品→お金→商品’→生産資本

生産資本は労働力と生産手段でできているから、この循環は次のように整理できます。

↗︎労働力 生産資本⇒商品→お金→商品’ . ↘︎生産手段⇒生産資本’

拡大再生産の場合、この循環で生産資本が増大する。

単純再生産の場合、この循環で生産資本の規模は変化しない。

前項目と違い、生産資本を中心とした循環を描いています。

生産資本とは生産に使われる資産を意味します。ピザ屋の場合だと石窯やナイフ、フライパンといった料理道具などキッチンのシステム全体が生産資本にあたります。

「生産資本⇒商品」は、オーブン(生産資本)からピザ(商品)が出てくるところを想像すれば理解しやすいです。

そして「生産資本⇒商品→お金→商品’」は、そのお金でさらにピザを焼くために、新しい小麦粉やチーズ、労働力を買うところまでを見せてくれます。

「商品’」が労働力と生産手段に分かれます。

労働力は店員やシェフに支払う賃金そして生産手段は小麦粉やチーズを買うことです。

生産手段には道具が含まれ、石窯やナイフが摩耗したら、交換するのにもお金がかかります。

そして摩耗を別にして、ピザ屋が人気を呼んでお客の数が増え、石窯を増設するようになれば、それは生産手段が増加することです。

石窯の数が増え、生産の規模が増大すると、それは生産資本が増えたことを意味します。

もし店の主人が大きなピザ屋の経営を目的としていれば、彼は生産資本の規模を増大させることに注力するでしょう。

資本家が資本の規模を増大させて競争力を保とうとすることは、とても自然です。

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