商品の流通は、資本の出発点である。お金が「資本」なのか、それとも「ただのお金」なのかは、その流通形態の違いによって決まる。
商品流通のもっともシンプルな形は、商品→お金→商品 である。
これは商品を売ってお金を得て、そのお金で他の商品を買うことだ。これは商品がお金に変容し、お金が再び商品に変容すること、もしくは買うために売ることである。
だが、私たちはこれ以外の形の流通を知っている。 それは、お金→商品→お金 である。
これはお金で商品を買い、その商品を売ってお金を得ることだ。お金が商品に変容し、そして商品が再びお金に変容すること、もしくは売るために買うことである。
このように流通するお金を、「資本」と呼ぶ。
流通の目的と原動力
「商品→お金→商品」という流通は、ある商品から始まり、ある商品に至って終わる。
そしてその商品は消費され、流通から外れてしまう。この流通の最終目的は消費なのだ。つまり、使用価値がこの流通の目的である。
逆に、「お金→商品→お金」という流通はお金から出発し、最後にはお金に戻る。だからこの流通の目的と、それを起こす原動力は、交換価値それ自体である。
工業も商業と同じ
売るために買う、もしくは高く売るために買うことは、商業に限ったことだと考えがちだが、実は工業の資本も同じ方式で動く。
工業では、お金で原材料を買い、商品を作ってそれを売ってお金を得る。 つまり工業も結局、商業と同じく、お金→商品→お金 と表現することができる。
途中の商品を省略してみると、お金→お金’ になる。つまり、元のお金がより高い価値のお金に変化している。 これは分野を問わず、一般的な資本を表現する公式なのである。
流通は価値を生まない
同じ価値の商品が、お互いに交換されても剰余価値は生まれない。 流通、つまり商品の交換だけでは価値を生み出さない。
「お金→商品→お金」のように、高く売るために買うという循環は、流通の世界で起こるものである。 このような交換は、等価のもの同士が交換されることになり、剰余価値は生み出さない。
このような方法で商人が得た利益はただ、買うときと売るとき、二重であげた利益に過ぎない。
お金の資本への転換も、このような商品の交換の掟を守らなければならない。
だから、資本家は、商品をその価値で買い、その価値で売りながらも、最後には自分が投資した価値より多い価値を作り出さなければならない。