個人の習熟度によって作業効率が変化する
周囲に自分以外の人がいることで、やる気が出て作業効率が高まるというケースがあります。他者の存在によって作業量が変化するという現象に着目したトリプレットは、糸巻き実験を行いました。
この実験は、釣り糸を巻くリールを改造し、糸巻き機を作成、それを使って一定の長さの糸を巻く作業を行う場合、ひとりで巻くのとふたりで巻くのとでは作業スピードがどれだけ変化するのかを比較しました。
結果は、ひとりで巻くよりもふたりで巻いた方がスピードが速くなることが判明。F•H•オルポートは、こうした現象を「社会的促進」と名付けました。
しかし、必ずしも他者の存在が良い結果を生むとは限りません。例えば、会社でプレゼンを行う際、他者がいることで緊張してしまい、うまくプレゼンができなかったことはありませんか?
このように他者の存在によって作業の質や量が低下する現象を「社会的抑制」と呼びます。なぜ、社会的促進と社会的抑制が起きるのでしょうか? ザイアンスは、それらをわける鍵は、個人の習熟度にあると考えました。
物事に対して慣れているかどうかで社会的促進と社会的抑制のいずれかが起きるというわけです。
先ほどのプレゼンを例に考えると、プレゼンに慣れているAさんは、他者がいるとむしろ張り切って自分の企画を提案できますが、プレゼンに慣れてないBさんは、他者の存在が気になって緊張してしまい、自分の企画をうまく提案できません。Bさんのような社会的抑制を避け、促進効果を得るためには、その物事に対して経験を積むか知識を高めることが必要となるわけです。