私たちが目や耳で捉えた情報は、どのようにして脳の中で認識されていくのでしょうか。
目でキャッチした画像情報は、いったん頭の後ろの方(後頭葉)にある視覚中枢に届けられます。耳でキャッチした音の情報も、やはり後頭葉にある聴覚中枢に届けられます。
そして視覚中枢や聴覚中枢から、脳の表面の大脳皮質にあるたくさんの神経細胞を通って、前頭前野に情報が送り込まれます。
前頭前野は、人間と他の動物を区別するポイントとなる重要な場所で、ここで情報を判断したり認識することになります。
しかし、情報の伝達ルートはこれだけではありません。もう一つは、大脳皮質の神経細胞から脳の奥の方にある視床下部(自律神経機能と関連しながら、意欲や集中力を高める働きをします)を介して、A10(エーテン)神経群と呼ばれる部分を通過し、ここから前頭前野に到達するルートです。 A10神経群とは、次のようなさまざまな役割を持った神経核の集まりです。
・海馬回…学習したり、ものを覚えたりする短期記憶の中枢を担う ・扁桃核…感情や身の危険などの危機感を覚える部位 ・側坐核…好き嫌いを感じたり、愛情を高めたりする ・尾状核…感情を覚え、複数の言語も操る
つまり、A10神経群に属するさまざまな神経核を情報が通過する間に、「好き」「嫌い」「感動的」「危ない」「おもしろい」「興味がある」といった感情が生み出されます。
その中でも、とくに「好き」「感動的」「おもしろい」「興味がある」といった前向きな感情を含んだ情報は前頭前野に到達すると理解した情報となります。 この情報は考えてみる価値があるというレッテルが貼られるので、自分からやってみようという気持ちが自己報酬神経群で生まれ、次のステップである「考え」へと進んでいくのです。
それでは、なぜ前向きな気持ちだけが次のステップへと進んでいくことができるのでしょうか。
A10神経群は、ドーパミン神経群とも呼ばれていて、海馬回や扁桃核を中心にドーパミン神経伝達物質をたくさん分泌しています。このドーパミンは、前向きな気持ちの人、明るい性格の人の方がたくさん分泌されることがわかっています。
前頭前野に達した情報は、次に自己報酬神経群を介して線条体へ、そしてさらに、もう一度A10神経群を含む「ダイナミック・センターコア」へと伝わっていきます。
したがって、ダイナミック・センターコアは、その一部であるA10神経群と前頭前野を介して「感情」から「気持ち」を生み出すとともに、その情報が再度伝わると「思考」を呼び起こす機能を持っています。
つまり、ダイナミック・センターコアを主な舞台として、人間の感情・気持ちと思考・知能は連動しながら一体的に働いていると言うことができます。