言語の遺伝子

1980年代、KEというイニシャルの一家が、研究者たちの注目を集めた。3世代にわたる多くの家族に会話・言語障害があり、ただ1つの機能不全遺伝子をはっきり示す形で症状を受け継いでいた。

最終的に、オックスフォード大学の科学者たちが原因となる遺伝子を突き止めた。それはフォースヘッドボックスタンパク質P2または通称FOXP2という。

FOXP2の遺伝子は、発育する胎児、のちには小児期、そして成人期に脳、心臓、胃、肺の遺伝子をスイッチオンにする転写因子をコードする。この遺伝子は、脳内で言語に関わる領域の配線に関与しているらしく、おそらくは複雑な思考や会話に必要な協調運動の習得の助けになっているのだ。

興味深いことに、この遺伝子は他の多くの動物にも見つかり、マウス、コウモリ、鳥などの声音にとって重要と考えられている。

チンパンジーのFOXPタンパク質はヒトのものと2個のアミノ酸が異なるだけだが、この小さな違いだけでも、ヒトが話せてチンパンジーが話せない理由の一部が説明できるかもしれない。

研究者が実験室で培養中のヒト脳の細胞に、その遺伝子のヒトとチンパンジーどちらかのアレルを挿入したところ、遺伝子の異なるパターンのスイッチが入ったことがわかった。

おそらくFOXP2は、ある種の主制御装置として働き、あるパターンの遺伝子を活性化させ、最終的にヒトの脳を会話のために配線する一方で、チンパンジーの脳には異なる形の接続をつくるのだろう。(遺伝子・DNAのすべて より)


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